こがねい詠春拳術会

黐手で膀手と滾手を使えること

攤手の侵入する角度とタイミング

相手に悟られずに角度を取ることに悩んでいる詠春拳の練習生がおりました。 相手にいかに情報を与えることなく侵入する角度を取れるかということですが、いつも接点の感覚に集中せよと教えております。 角度が変われば接点の感覚は当然変わるのですが、上級者はその変化が微細で相手としては感じ取りにくいのです。 難しいのは脚を動かしながら接点を一定に保つということ。 一輪車に乗りながら皿回しするような器用さがいるのかもしれません。 腕をむやみやたらに動かすなというと、腕を固めて脚を動かそうとしますが、脚の動きが固い腕を通じてダイレクトに相手に伝わってしまうので、早い段階でシャットアウトされてしまいます。 初動の段階から接点にできるだけ変化を与えずに適切な角度を取るには腕も適度に弛緩していないといけないのです。

正中線という直線で左右の判断をする

左右のどちらに捌くべきかという質問を受けました。 詠春拳では左右の判断は正中線で行います。 この正中線は攻撃ラインの正中線のことで、相手の中心軸と自分の中心軸を結んだ最短距離の軌跡で描かれる一枚の縦の面といえます。 線だと上下の高さがないので面で捉えた方がよいと思います。 その面に対して、どちらに相手の矛先が来るか、相手の力が来るかで判断します。

前に力を出しながらも後ろに下がる

詠春拳では相手にある程度の侵攻する力を感じさせておきながらも、相手を前に引き出すことをしないといけません。 これが難しいです。前に力を出しながらも後ろに下がるような感覚が私の中にはあります。 実際、相手も前につんのめるような感じで崩れることが多いです。 前方向に力を出しながら前に出ると相手を押すことになりますから、脚がちゃんと動く相手であれば下がられてしまいます。 相手の防御反応を引き出しながらもそれを手前に引き込むようにしないといけません。 どうしても、前に力を出そうとすると、身体全体まで前に進行しようとするので難しいといえます。 詠春拳特有の繊細な接触感覚なので、相手との接触点に集中して相手の状態を観察して感じ取るようにしましょう。

プレ黐手で膀手と滾手を使えること

プレ黐手をすると、初学者にありがちなのは、ラップ打ばかりで腕をぐるぐる回してしまうこと。 確かにまっすぐに手を出していけば、プレ黐手というルールの上ではある程度受けが効きますが、ただ縦の回転をしているだけですから限界があります。 膀手や滾手というのは縦方向の力を横にずらす、流す効果があるので、それだけで一瞬、体勢を崩せます。 なので、縦回転だけやっていると、一瞬、崩されて打撃を放り込まれることになるでしょう。 膀手とは上げ受けではありません。ガチンと相手の打撃を上方向に流すものではなく、柔らかく弾力のある腕を使って、相手に回転の力を与えることです。 相手に影響が出れば、相手の動きが止まります。 バランスをわずかでも崩せればそれを戻すための時間が必要だからです。 効果的な膀手ができるよう感覚を磨く練習をしたいものです。

下の伏手が飛んでしまうのは論外

詠春拳の初学者にまっさきに身につけてもらいたいことは伏手を閉じるということです。 伏手が腕の横まで飛んでいってしまうのは、そこから先を学んだところで何も載せられないことを意味します。 それだけ重要な土台がアウトサイドの交叉を閉じるということにあります。 当会の詠春拳の拳理の根底にあるのです。 それができない状態で別な方法で回避するという考えはありません。 ベースになるものを守れないで拳を構築することができないのです。 私が初学者のころは、強引に腕力を使ってでも守ること。それができるようになったら、脚や前後のコントロールで制御できるようにしましょうと教えられました。 私も初学者のころは腕力に頼ってやっておりましたが、自分の体勢が崩れても中心線を突破させないよう必死にやっておりました。 正中線を閉じながら身体は崩されるというのは変な感じがしますが、当会の詠春拳の理論においては軸をまっすぐにすることよりも重視すべきことになっております。

腕の三角形を強固に保ちながら脚を動かす

腕の運動を極力抑えて、脚を動かすことを意識している詠春拳の練習生へのアドバイスです。 腕の意識で大切なのは三角形を形作っているかを常に意識すること。 私も自分に相手が危害のある距離ではない場合は、簡単に正中線から手を離してしまうのですが、詠春拳の初学者はあまりこれを真似しない方がいいのかもしれません。 できれば腕の三角形を強固に保ちながら脚だけで動くことをやってみてほしいです。 腕を緩めすぎて正中線が空くことはよくないことですので、多少の力を使ってでも三角形を作ることに専念する。 その三角形を崩しにくる力に関しては100%脚で対応するというのが理想です。 当然ながら脚の運動量は多くなりますが、絶対に通る道ですので頑張ってもらいたいです。