詠春拳の力の感覚 ~ 骨格に納める
相手の腕の前腕の途中が軋むような感じ
自分の仙骨から発した力が上手いこと相手の身体の中に入っていくような感覚のとき、相手は、前腕の途中に軋むような力がくることを感じるようです。 相手の緊張の度合いにもよるりますが、防御反応が強くでると、前腕の骨で相手の全身の重みを受けることになるので、軋むような感覚になるのでしょう。 骨の中を力が通って行くような感覚で相手の身体に力を通せると、相手は接点をはずしにくくなります。 一瞬だけでもいいので、相手のバランスを崩すことができると、相手は自分に対し何らかの依存の反応を示すので、相手と繋がることができます。 相手の前腕で力が滞っているだけで、相手に痛みを与えてしまうと逆相手はその痛みから逃げようとし、離そうとしてくるので相手の身体全体を崩すという目標は達成できません。 力を一気に相手の膝まで到達させる必要があるということです。
身体全体が水の入った袋のように
詠春拳の練習生に体重移動や軸移動を説明するときに、水が入った大きな袋をイメージしてほしいとよく言っています。 私はその袋の中の水が流動的に移動して相手に何らかの力を与えるというイメージを持っております。 逆に全身を硬直させて棒のようにしてしまうと、地面との接点を中心とした回転運動になってしまい、ただ相手にもたれるだけの力しか出せません。 ただ、この相手にもたれることによる力を日常生活では多く使っており、その力感が力を使うことの常識になっている方にとっては、 流動的な物体の移動による大きな力は実感しづらいかもしれません。 私も昔は軸を固めて、いわゆる詠春拳としては間違った力の出し方をしていました。 正しい力の使い方に修正するのには大変苦労しました。
相手の内側に入っていこうと腕を抜こうとするな
相手との距離を縮めようとして、腕を相手の隙間から抜こうとする詠春拳の練習生も多いです。 相手との接点がせっかくあるのにその接点を使わずに相手の隙間から手先や肘をねじ込もうとする動きなのですが、相手が安定している限り、 仮にその攻撃が入ったところで有効的に働くことはまずないでしょう。 相手との接点を大切に、接点を通して相手の身体全体を崩していった結果、攻撃が自然に入ったとするほうが望ましいです。 相手の隙間に手先をねじ込んでいくのは、強引で短絡的な手法ともいえ、相手も対応しやすいので何度も失敗します。 その失敗から抜いていく動きが無効であることに気がければよいのですが。
骨格に納める
楽に前方向の力を出すためには、上手に相手からの反力を自分の骨格に納めることが大切です。 この骨格に納めるという感覚がなかなか掴みづらいものなのですが、長時間、太極拳の推手や詠春拳の盤手など稽古をしていると徐々にできるようになります。 長時間やって筋疲労が起こる部位が無駄に力を使っており、筋力に頼った動きをしているから筋疲労を起こしていると考えるわけです。
プレ黐手の押さえるが軽すぎる
粘る動きに入る前に、手の基本的な動きの展開をする「プレ黐手」なのですが、黐手がメインになってしまうとほとんどやらなくなってしまいます。 しかし、詠春拳の大切な感覚を養う稽古でもあるので、初心者のただの通過点となる練習とは捉えずに何度も練習しないといけません。 特に気になるのは拍手やラップサウの後の相手の腕の押さえが軽くなること。 軽くなれば、相手も次に受ける腕の動きへの回転が速くなりますので、簡単に受けることができてしまいます。 詠春拳では一手一手が重く、相手の腕を最後まで制御するという意識の持続が大切です。