こがねい詠春拳術会

腕の長さ、軸と接点との距離の関係

行けたら行くという微細な感覚

よく何かのお誘いをしたとき、「行けたら行く」というのは、ほぼ行かないということと同義といいますが、 この「行けたら行く」という感覚を相手に微細に伝えることは接触感覚としてはよいことだと説きました。 相手としては、手が離された瞬間に攻撃の手が飛んでくるということが伝わってくるのであれば、 容易に手を離すことができなくなります。相手の心理としては、行けたら行くは、 来れるときは来るかもしれないと伝わるわけです。

「行く」と宣言してしまうのは間違いです。「行きます」いうのは、断言であり、 どこの方向にこれこれの力でというのを明確に伝えてしまったら、相手は対応を簡単にしてきます。 行くかもしれないがまだ行かないという状態を保持することが、相手が手を離せなくする状態を作る感覚です。 言葉遊びのように聴こえるかもしれませんが、詠春拳の接触感覚は微細であり、感じ取るひとつのヒントとしてもらえればと思います。

腕を短く使ってみました

高校生の男の子が反省会のときに、「今日は腕を短く使ってみましたが、どうも上手くいかなかった」と反省を口にしておりました。 詠春拳を1年以上やってきている練習生は、自分の体軸から近い場所では力が出せ、 自分の体軸から遠い場所では力が出しにくいことを経験的に学んできております。 ほぼ全員がそれは理解しており、軽々しくいい加減に手を伸ばしていくと、 カウンターを合わせられることは理解しております。

腕を短くして使ってみても上手くいかない理由は、自分の腕が短いまま押さえられてしまうからでしょう。 一見、力を出せそうに思えますが、角度を間違えると、相手はたやすく押さえ込むことができます。 詠春拳で大切なのは、接点の位置であり、腕の長さではないよとアドバイスしました。 接点が自分の体軸に近いことが力を出すポイントであり、腕を短くすれば単純に解決するという問題ではありません。 自分が腕を前に長く伸ばしていても、相手との接点が自分の肘や上腕などにあれば、 力は出せますし、相手が手先で接しているのであれば、それを押さえ込むことはなかなかできません。 長さというものは力学においてはとても大切な要素ですが、その長さの概念をもう少し深く考える必要があります。

足の出し方に問題がある

まだ多くの練習生にステップワークの重大な問題があることがわかり指摘しました。 足先を外に向けて足を踏み出し、身体を移動させたあとに、身体を切ろうとします。 この順にやっていては、上手くいくことはありません。なぜ相手に影響を与えられないんだと上半身や腕を頑張っても無駄な徒労に終わるのは、 足元に問題があるということです。とはいえ、口でいうのは簡単ですが、脚というものは神経が腕ほど敏感でないのか、 意識してもなかなか直りませんので、今後もしつこく言っていくしかないなと思いました。